志摩スペイン村

 志摩スペイン村/パルケエスパーニャは、テーマパークだ。
 広さは東京ディズニーランドと同じか、もっと大きいかもしれない。でも、それほど混んでいないので、乗り物も比較的、並ばずにすぐに乗れる。
 ジェットコースターや、河の中や、お化け屋敷みたいな、かなり凝ったアトラクションの中を移動する船や、汽車などの乗り物が、一日ではとてもすべて乗りきれないほどたくさんある。
 僕は今年の夏に、親戚の子供たちと行ったのだけど、子供たちは大喜びしていた。
 「マイナス三十度の世界を体験」という部屋があって、乗り物にのって、少し疲れてそこに行くと、一瞬に冷えて、また、別の乗り物に乗りに行く元気がもどる。
 冬は、また別の暖まれる場所くらいはあるだろう。
 最初は、何故こんなものをつくってしまったのかと思ったけど、実際に行ってみると、周りは山みたいなところに、スペインの街並みがあって、上を見ると大きく空が広がっていて、目障りな建物は何も見えないので、スペインに来たような感じがする。
 そして、一日の決まった時間に、パレードがあって、スペインから来たダンサーがダンスを披露したりしていて、これもなかなか迫力があった。
 でも、気球に乗って、百五十メートル上空まで上がれば、伊勢志摩のリアス式海岸に、真珠のイカダが浮かんでいるのが見える。
 伊勢志摩、鳥羽は真珠の名産地だ。
 僕はこの気球がよかったのだが、三月までは強風で乗れないみたいだ。
 近くに『ひまわり温泉』という温泉もあるみたいなので、冬場は温泉がいいかもしれない。
 あと、ぬいぐるみを着た人とがが出てくるミュージカルが行われていたり、アニメなどが上映されていたりして、志摩スペイン村は基本的に子供向けの施設という感じだけれど、レストランが何軒かあって、本格的なパエリアとかのスペイン料理が食べられたり、ショッピングモールもあって、スペインから直輸入のガラスや陶器などの食器や、色々な雑貨があって、見ているだけでも、なかなか大人も楽しめると思う。
 スペイン文化に触れる施設もいくつかあって、ハイビジョンで、スペイン絵画に関するドキュメンタリーが見れたり、リゾートホテルもあるみたいだ。
 志摩スペイン村について、もっと詳しい事が知りたい人は、スペイン村のサイトwww.parque-net.comを見るか、近畿日本ツーリストの人にでも聞いてみたら、詳しい事を教えてくれると思う。

 伊勢志摩とか、伊勢湾では、釣りとかをすると美味しい魚が釣れるし、ヨットやウインドサーフィンなどのマリンスポーツは大抵できるみたいだし、近くには、伊勢神宮やラッコとかのいる鳥羽水族館などがある。あと、同じ三重県内では、F1とかオートバイの八時間耐久レースが行われる、鈴鹿サーキットや、伊賀上野には忍者屋敷とかがあって、考えてみると結構いろいろな観光地がある。
 鈴鹿サーキットにも大きな遊園地があって、レースが行われていなかったら、ゴーカートでサーキットを走れたりする。
 オートバイは八耐は別としても、ロードレースより、モトクロスの方が、ジャンプをしたり、本当に土が飛んでくるような近くで見れたりするので、見るのはそちらの方が楽しめるかもしれない。
 伊賀上野は、昔から忍者の里としては有名で、昔の手裏剣が展示してあったり、忍者屋敷がそのままあり、伊賀流の忍術を今でも継承している忍者が実演を見せてくれる。

 最近、松阪市に小津安二郎の記念館ができたとのことだけど、来年は、小津安二郎生誕百周年で、ニューヨークや東京など、世界各地で回顧展が予定されているのだが、小津安二郎は九才から十九才まで三重県にいたらしく、三重県でも大規模な映画祭が行われて、多くの作品が上映される。
 黒澤、溝口、小津は映画史に残る巨匠で、ヴェンダースも自著の中で、「ロックが私の青春を救い、小津が私の師になった」と述べていて、『東京画』というビデオ作品でも、小津にまつわる土地や、カメラマンにインタビューを行っていた。
 僕なんかは逆に、小津の映画を封切りではすでに見ていないし、まだ、ヴェンダースの方が小津よりは年代的にも近いので、多くの作品を見ていて、私の師だと呼びたくもなるなのだが、三重県には、小津の映画や、テレビがでてくる以前の、日本映画の全盛期の作品などが撮影されたロケ地が沢山あるらしい。
 実は、僕の親戚や知人とかも、来年、小津の作品が上映される、「三重映画フェスティバル」の手伝いをしていたりするのだが、市川昆や藤田敏八なども、三重県出身の映画監督だそうだ。

 三重県は、新幹線は名古屋の次はもう京都なので、志摩スペイン村とかのある伊勢湾沿いは、電車だと、主に近鉄で移動するのだが、近鉄の特急は、新幹線と同じくらい快適で、サービスもいい。
 以前は、電車に乗ると、おしぼりが出てきたのだが、いつ頃からか、それがなくなってしまったのは、サービスが低下したようで、少し残念なので、個人的には復活してほしいと思っている。
 
 三重県内は、特急の止まる駅とか、近鉄が近くを走っている付近は、やや街があって、開けている感じがするけれど、例えば、小津の映画が撮影された場所を、地図を持って訪れてみると、全く変わっていない可能性もあるので、おもしろいかもしれない。
 アンドレイ・タルコフスキーは、「映画は、時間を固定する芸術だ。音楽や他の芸術も、時間を扱う芸術はあるが、映画は文字通りの時間を固定する」という様な、少し難しいことを述べていたけど、本質的な時間を固定するという事だろうか。
 翻訳なので、正確なことは、わからないが、映画の時間と名所や旧跡を訪れて、時間が止まっている様に感じることとかは、少し似た何かがあって、興味深いものがある。
 
 三重県内には、全く観光地化されていない名所や旧跡も沢山あるし、尾鷲や熊野の方は近鉄も通っていないので、時代から取り残された秘境みたいな感じがするところもある。
 紀勢本線という、電車がすれ違うことの全くない、一本しか線路のない単線の上を往復している、JRの電車で移動したりするのだが、各駅停車なので、同じ県内を移動するだけでも、半日くらいかかってしまう。
 僕は中学の頃までに、尾鷲や熊野の方は、スケッチ旅行で油絵を描きにいったり、キャンプに行ったりして何度か訪れているが、変に外国に行くより、トリップした感じがするかもしれない。
 もう、ずいぶんと昔のことだが、テントを張って、薪を割って、飯ごうで御飯を炊いたりしながら空を見ていたら、畳の半分くらいある大きな野性のムササビが、ゆっくりと空中を飛んでゆくのを見れたりしたものだ。

 志摩スペイン村に行ったあと、大阪の梅田から、京都に向かう京都線の摂津富田という駅前に、『パッパーレ・ピザ』というピザ屋を経営する友人がいるので、そこに一泊して、京都にも一人で行ってきた。
 京都はもう何度も訪れているが、バスを使って移動したら、気楽にいろいろな場所を回れて、バスから、京都で生活している人達の様子も見れて、楽しいことがわかった。
 京都は今はもう都会なので、映画の撮影とかは、嵯峨野とか、吉野の桜とかの方がいい感じがするが、優れた寺とかが沢山あるので、京都はやはり捨てがたく、何度行ってもいい感じがする。
 ちょうど、住基ネットが施行された頃、真夏に僕は京都の街を歩いていたのだけれど、住所を一箇所に決めない、あるいは、移動をよく行うのも、そうした管理に対抗する方法かもしれない。
 街並保存地区になっている、祇園とかを、昼間でも歩いてみると、三味線や舞踏の稽古が行われる街角で、日傘をさした粋な芸者が歩いてきたりして、まだ、京都には、何か幻想的なものが残っていると、静かな感動を与えてくれたりする。
 銀閣寺は世界遺産で、その砂の庭とかは、これも何度きてもいいものがあるが、銀閣寺まで至る参道の左手の小川の横に『哲学道』という、小道があって、その小道は僕は今回初めて歩いたのだけど、最初は四角い石が、少し間隔を空けながら二列に続いている。
 何故、『哲学道』と呼ぶのかわからないが、その石の道を交互に歩きながら進んでゆくと、それがやがて三列になる。
 僕は、少し弁証法とか、ドゥルーズのこととかを思ってしまった。
 また、機会があれば、日本再発見の旅にも出かけてみたいと思う。(12/28)

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