中央線/反戦運動

 数週間ほど前、中央線のとある駅で降りて、改札を出て歩いてゆくと、胸のところに「全学連」と書かれた服を着た学生が、数名署名活動を行っていた。
 たて看板には「有事法制反対」とか、「アメリカのイラク攻撃反対」とか、書かれてある。
 それで、街頭で署名とか、それほどする方でもないし、「全学連」なんて、少し時代遅れな響きがあるが、やっている事自体は、時代遅れでもなんでもないし、歩きながらなので、最初、言っている事とかは、よく分からなかったけど、「反戦」ということで、今回は署名する事にした。なんでも、百万人の署名を集めているらしい。

 その頃、米国がイラク攻撃を準備しているらしい、という事を知ったのだが、911以降、合衆国政府が、冷静な判断で動けているとは、僕には思えない。
 では、日本政府はどうかというと、これまた、米国の軍事行動には、いつも経済的な理由、例えば、米国で車が売れなくなるからとか、そういう理由からか、きちんと反対した事は、これまで一度もない。
 それで、一番問題なのは、そうして、日本が、米国の軍事行動をあと押しする事で、前回のアフガニスタンの時もそうだが、全く罪のない、子供とかも含む民間人が、死んでしまったりすることだ。

 それで、ともかく署名する事にして、自分の名前と住所を書いていると、その短い時間を利用して、胸に「全学連」と書かれた服を着ている学生は、
「実は、沖縄の米軍基地の周辺で、基地をめぐって、反戦デモがあるんです。自分たちは、それに参加しなければいけない…」
 と、何か一生懸命な感じで、情報を伝えようとしてくる。
 それに、黙ってうなずきながら、板の上で書くので、なかなかうまく、字が書けないのだが、とりえず住所まで書き終えて、交通費とかのカンパが必要だということなので、わずかだったけど、カンパもしてしまった。

 沖縄での反戦デモ? 僕は普段、新聞は一通り目はとおすけど、テレビはあまり見ない。
 でも、その日、たまたま『ニュース23』を見てみたら、筑紫哲也は休みみたいで、やっていたニュースは、石原慎太郎が、大道芸人にライセンスを与える、というものだった。

 テレビニュースというのは、どういう価値判断で編集が行われているのか分からないが、例えば、街角で反戦デモが行われていたり、沖縄とかで何か起こっていても、それを隠蔽する、とまではいわないが、それを避ける傾向があるのではないか、と思う事がある。
 今回に限らず、 僕は九十年代を通して、ニューヨークにいる間や、それ以前から、基本的には反戦的な立場をとっていて、日本政府はいつも、米国の軍事行動には、賛成することに決まっているようなので、日本にいるうちは、それで困らないかもしれないが、外国とかでは、自分はそういう国の、多数派の人間とは違うことを説明しなければいけなかったりするので、本当に迷惑してしまう。
 でも、実際は、今回のイラクの問題でも、日本で反対する人がいる感じで、ニューヨークでは、少なくとも大学の中とかでは、自衛目的以外の空爆には、反対する人の方が多い。
 でも、日本国内では、そうした意見は、ほとんど伝わってこない。
 ニューヨークでは、逆にとりあげられるのは、日本政府の意見とかがほとんどだ。
 その結果、好戦的な意見のみが、メディアを通じて、投射して拡大していくことになる。
 正直なところ、僕は九十年代を通じて、マスメディアが、好戦的なムードを盛り上げて、911の様なテロを導いてきた部分もあると考えている。

 九十年の湾岸戦争の時は、イラクはクウェートに侵攻していたので、クウェートの人々の事を考えると、警察的な意味での軍事介入の必要性は考えられたが、先制攻撃は、世界秩序を好戦的な方向に導くことになるし、反テロといっても、客観的に見ると、それ自体が戦争を仕掛けていることにもなる。
 とにかく、911以降、合衆国政府や、米国市民が、冷静な判断ができているとは、僕には思えないのだ。
 やはり、今回は国連によるイラクへの査察が、継続されてゆく事が大切だし、毎回、反対するのも面倒だけど、機会があれば、「反戦」を表明してゆく事も大切なのではないだろうか。(14/09/26/02)
 
  

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